2014-11-27

明治36年の年賀状から


松山の港町・三津浜にある「木村邸」でのこと。

ここは、明治14年に建てられた築132年の商家で、元々は船具などを扱う問屋さんを営んでいたそうです。今は地元の方やボランティアさんが運営・管理を行っています。


ここへ見学に行ったとき、見せてもらったのが明治36年の年賀状。


それはそれは達筆で、素敵なものばかり。
紙は今よりかなり薄いのですが、風情というか味があります。

写真右側が郵便で届いた普通の年賀はがきで、左側が名刺ですが、これ実はどちらも年賀状。「年始のご挨拶」という方が、正しいかもしれません。

年賀はがきの送り主の住所を見ると、全て三津以外から届いたもの。
逆に名刺は、ほとんどが三津の方々なのだそう。

惚れ惚れするほどシンプルで美しい名刺

つまり、同じ地域に住む人は年賀はがきを出さず、直接ご挨拶に伺って名刺を置いていく、というのが当時の風習だったようです。

「大変だな~」と思う反面、そんな地域の付き合い方を少し羨ましく思ったり、顔を合わせて挨拶する大切さを思い直したり、「ごあいさつ」の意味について考えたり―。

木村邸の特徴や三津の風趣などを教えてくれた越智さん



時が止まったような空間で、美味しい珈琲をいただきながら、しきたりや習わしについて、ふと考えました。

心持ちひとつなのかもしれませんが、こうやって『ふと立ち止まる』ことができるのは、そうした「場」や「機会」があるお陰なのだと、しみじみ。



伊予三津浜 木村邸
http://www.kimuratei.com/
※不定期で展覧会やライブイベントなどを開催