2015-03-23

愛媛の狛犬 ~その1~


神社の参道入口や本殿前にいる狛犬。
あまりにも風景に溶け込んでいるので、意識して見ることは少ないかもしれません。

でも狛犬は、つくられた時代や地域によって特色があるので、じっくり観察すると色んな発見があります。今回は、松山のちょっと珍しい狛犬をご紹介。


先ずは、「日尾八幡神社」にいる狛犬。
見よ!この満面の笑み!


お顔が平面的で、マンガに出てきそうなキャラクターっぽい(人っぽい)表情をしています。
ここまで口角が上がった笑顔は、他ではなかなか見られません。


ちなみに尻尾の形も特徴的。
記号的なフォルムに何かメッセージがあるのではと考えてしまいます。


境内には、役目を終えた狛犬も。これらは、江戸時代作のものと思われます。
並んでいる姿が、まるで仲睦まじくお話をしているよう。(祀られていた時は、左右が逆、側面を神社正面に見せながら立っていたと思われます)


しかも、吽形(右側)の狛犬の頭上には、宝珠のかたちをした「角」があります。
桃がちょこんと乗っているような、髪を結っているような、可愛らしい角です。


狛犬鑑賞で「角」は、キーポイント。
研究者によってはこの角があるかないかで、狛犬か獅子かを区別する人もいるほど。
この狛犬は、かなりの大きさなのに全体のフォルムが引き締まっていて迫力があり(しかも笑顔!)、素晴らしい狛犬でした。


そしてこれは、ちょっとのんびり屋の狛犬さん。
四国霊場五十一番札所「石手寺」の入口にあり、よく見ると玉に乗っています。
もそっとしたかたちなのに、目が離せなくなってしまう魅力があるから不思議です。


そして次は、シャチホコのようなかたちをした狛犬。
「井手神社」の本殿前にあり、尻尾がシャチホコのようにうねりながら反り上がっています。


動きのあるフォルムに迫力があり、しっかり守ってくれそうな男前なお姿。
この特徴的な尻尾は愛媛にわりと多いのですが、これは広島やその周辺の地域に多い特有のかたちです。


そして、私が今(のところ)愛媛で一番美しい狛犬だと思っているのが、こちら。
「椿神社」の狛犬です。今は役目を終え、境内に展示されています。


室町期末期のもので、なんと木造。
一部外れてしまっていますが、きれいな玉眼を嵌入しています。


お顔の表情も凛々しく、たてがみの束になっているところも、首から前足にかけての流れも、後ろ脚のつき方も、どこを見ても美しい。まさに狛犬のサラブレッド(!?)。


そもそも狛犬は、シルクロードを渡って大陸から伝わったとされていますが、原形は犬ではなくライオンだという説が有力です。(もちろん「狛犬」という呼び名も日本で付けられたもの。) きっと古来の人々は、当時日本に生息していなかった百獣の王ライオンに神秘的な強さを感じたのでしょうね。狛犬は「神獣」や「霊獣」などと呼ばれることも。

ちなみに、口をあけている「阿形」と閉じている「吽形」が二体一対になっているのは、日本ならではのかたちです。『阿吽の呼吸』に込めた美学、なんとなく分かる気がします。

愛媛にはまだまだ魅力的な狛犬がいますので、少しずつ紹介していければと思っています。



●日尾八幡神社 愛媛県松山市鷹子町894

●石手寺 愛媛県松山市石手2-9-21

●井手神社 愛媛県松山市北立花町2-4

●椿神社 愛媛県松山市居相2-2-1